コーヒーについて 更新: 2026.07.21

サードウェーブとは?スペシャルティコーヒーの文化史と3つの波の違い【2026年版】

この記事でわかること

スペシャルティコーヒーの基本から知りたい方へ:
意味や普通のコーヒーとの違い、初心者向けの選び方は、親記事「スペシャルティコーヒーとは?初心者にもわかる特徴・違い・選び方」で詳しく解説しています。

  • サードウェーブコーヒーとは何か(ファースト・セカンドとの違い)
  • 3つの波がどんな順で生まれ、何を変えたのかの歴史的整理
  • スペシャルティコーヒーの定義とSCAの評価基準
  • サードウェーブの豆を家庭で愉しむときの選び方のポイント

サードウェーブコーヒーとは、コーヒーを大量消費の「商品」ではなく、ワインのように産地・品種・精製方法による個性を愉しむ「嗜好品」として捉える文化の潮流(第3の波)のことです。ファーストウェーブ(大量普及)、セカンドウェーブ(高品質化)を経て、産地の個性そのものを主役にしたのがサードウェーブです。EL ORIGENでは南米スペシャルティコーヒーを扱う立場から、SCAの評価基準や産地データを調べ、公開情報を整理してこの記事をまとめました。2026年7月時点で、日本でも「浅煎り・シングルオリジン」の専門店が定着し、サードウェーブは一過性の流行ではなく文化として根づいた印象があります。

サードウェーブコーヒーのハンドドリップと浅煎りのシングルオリジン豆
産地の個性を引き出す浅煎り・ハンドドリップがサードウェーブの象徴

サードウェーブコーヒーとは?3つの波の違いを一言で整理

コーヒーの歴史は、大きく3つの「波(ウェーブ)」で語られます。結論から言えば、ファースト=安く広める、セカンド=おいしく高級化、サードウェーブ=産地の個性を主役にする、という価値観の移り変わりです。なぜこの順番になったかというと、コーヒーが「日用品」として普及したあとに「品質」への欲求が生まれ、さらにその先で「どこの・誰の豆か」という物語性まで求められるようになったからです。

ICO(国際コーヒー機関)のデータによると、世界のコーヒー生産量は年間およそ1億7,000万袋(60kg換算)にのぼります。そのうちアラビカ種が約60%、ロブスタ種が約40%です。サードウェーブが主役に据えるのは、繊細な風味を持つアラビカ種のなかでも、さらに高い品質評価を受けたごく一部の豆です。

時代 キーワード 代表・焙煎
ファースト 19世紀後半〜1960年代 大量生産・家庭普及 インスタント/浅めのブレンド
セカンド 1960〜1990年代 高品質・カフェ文化 シアトル系/深煎りエスプレッソ
サード 1990年代後半〜現在 産地の個性・透明性 シングルオリジン/浅〜中煎り・ハンドドリップ

ファーストウェーブ:安く・広く(19世紀後半〜1960年代)

すべての始まりは、コーヒーが「特別な一部の人の飲み物」から「一般家庭の日用品」へと変わった時代です。連続式焙煎機の開発、真空パック技術の登場、流通網の発達を背景に、アメリカを中心にコーヒーの流通量が爆発的に増えました。

この時代の目的は「いつでも、どこでも、誰でも安くコーヒーが飲める状態」をつくること。そのため品質や産地の個性よりも、大量生産によるコスト削減が最優先され、安価なブレンドとインスタントコーヒーが主流になりました。味の追求より「普及」が価値だった時代といえます。

セカンドウェーブ:おいしさへの目覚めとスペシャルティの誕生(1960〜1990年代)

大量生産の代償として失われた「コーヒー本来の味」を取り戻そうと起きたのが第2の波です。台頭したのは、1966年創業の「ピーツ・コーヒー&ティー」や1971年創業の「スターバックス」に代表されるシアトル系カフェでした。人々は「安価な家庭のコーヒー」から、「カフェ空間で愉しむ高品質な一杯」へと移っていきます。深煎り(ダークロースト)のエスプレッソに、ミルクを合わせたラテやカプチーノが世界に定着します。

この波の途中、1974年に貿易商のエルナ・クヌッセン(Erna Knutsen)氏が、国際コーヒー会議で初めて「スペシャルティコーヒー」という言葉を使いました。その意味は「特別な地理的微気候(マイクロクライメット)が生み出す、独自の風味特性を持つ豆」です。これが後のサードウェーブへの架け橋になります。

なぜスペシャルティという概念が必要だったのか。それは、産地や生産者ごとの品質差を正しく評価し、価格に反映させる「共通のものさし」が求められたからです。この考え方が、次の波で一気に開花します。

サードウェーブ:産地の個性を主役に(1990年代後半〜現在)

2002年、トリーシュ・ロスギブ(Trish Rothgeb)氏が米国ロースターズ・ギルドのニュースレターで「サードウェーブ」という言葉を初めて定義しました。背景にあるのは、インターネットによる情報網の発達と、産地・ロースター間の直接取引(ダイレクトトレード)の広がりです。コーヒーは「どこの国の・どの標高の・誰の農園で・どう精製されたのか」まで語られる嗜好品になりました。

特徴は、シングルオリジン(単一農園・単一品種)、素材本来のフルーティーさを引き出す浅煎り、そしてバリスタが湯温や時間を調整する丁寧なハンドドリップです。SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)によると、スペシャルティコーヒーの本質は2つあります。「カップの中の品質評価(カップ・クオリティ)が高いこと」、そして「生産から抽出(From Seed to Cup)まで一貫して管理されていること」です。EL ORIGENが扱うペルーやブラジル、ボリビアの豆も、この透明性を前提に選んでいます。

南米コーヒー農園の生豆と標高の高い産地の風景
標高・品種・精製方法まで語れる透明性がサードウェーブの核心

スペシャルティコーヒーの定義とSCAの評価基準

現在、サードウェーブの精神を引き継ぐスペシャルティコーヒーは、世界基準で厳格に評価されています。SCA(Specialty Coffee Association)の評価基準では、合格ラインはカッピング(試飲審査)で100点満点中80点以上とされています。8割(80%)以上のスコアを得た豆だけが、正式にスペシャルティコーヒーと認められる仕組みです。採点対象は、フレーバー、酸味の質、後味のクリーンさ、欠点豆の有無など。これらを訓練を受けたカッパー(鑑定士)が一つずつ評価していきます。

SCAの評価基準を読み比べると、単に「高い・低い」ではなく、産地の個性がどれだけ明確に、欠点なく表現されているかが問われていることがわかります。なお、財務省の貿易統計によると日本の生豆輸入量は年間およそ40万トン規模で推移しており、その大半は普及品ですが、そのなかでスペシャルティが占める割合はごく一部にとどまります。だからこそ希少であり、産地を選んで飲む価値があるといえます。

サードウェーブの豆を家庭で愉しむ選び方

「専門店の浅煎りは酸っぱくて苦手」という声もありますが、これは豆選びと抽出でかなり変わります。実際にサードウェーブ系のコーヒーを家庭で試す人は、次の順で選ぶと失敗が少なくなります。

  1. 焙煎度から選ぶ:華やかな酸味が好みなら浅煎り、バランス重視なら中煎りから。最初は中煎りが無難です。
  2. 産地で選ぶ:まずは飲みやすいブラジル・ペルーなど中南米から。慣れたらエチオピアなど個性派へ。
  3. 精製方法を見る:ウォッシュド=クリーン、ナチュラル=果実感、と覚えると味の想像がつきます。
  4. 焙煎日を確認する:浅煎りほど鮮度が味に出ます。焙煎日が明記された豆を選びましょう。

一方で、サードウェーブの豆にはデメリットもあります。産地を絞り込み丁寧に精製・焙煎する分、普及品より価格が高くなりがちで、浅煎りの明るい酸味は「コーヒーは苦いもの」という好みの人には合わないこともあります。メリット(産地の個性・透明性・鮮度)とデメリット(価格・好みの分かれやすさ)の両面を理解したうえで、自分の好みに合う一杯を探すのが失敗しないコツです。

より詳しい豆の選び方は初心者向けコーヒーの選び方ガイド、産地ごとの違いはコロンビアコーヒーの特徴でも解説しています。実際にサードウェーブの豆を試したい場合は、EL ORIGENのスペシャルティコーヒー通販で南米産地の焙煎豆を取り扱っています。EL ORIGENでは、産地の標高や品種、精製方法の情報を確認したうえで豆を選んでいます。

よくある質問(FAQ)

「サードウェーブ」と「スペシャルティコーヒー」の違いは何ですか?

スペシャルティコーヒーは豆の品質や基準そのもの(1974年に概念が誕生)を指し、サードウェーブはその豆の個性を最大限に活かそうとする文化的な潮流(2002年に定義)を指します。高品質な豆(スペシャルティ)があるからこそ、サードウェーブという文化が成立しています。

サードウェーブに浅煎りが多いのはなぜですか?

豆本来のフルーティーな酸味や花のようなアロマは、深く焙煎しすぎると焦げた苦味に隠れてしまうためです。産地の個性を最もピュアに表現するために、浅煎り〜中煎りが選ばれます。

フォースウェーブ(第4の波)は来ているのですか?

諸説あり、確定した定義はまだありません。「家庭での精密な焙煎・抽出のテクノロジー化」や「サステナビリティの深化」を第4の波と呼ぶ動きはあります。ただ、公的に確立した定義は現状サードウェーブの延長線上にとどまります。

初心者はどの産地から試すのがおすすめですか?

まずはクセが少なく飲みやすいブラジルやペルーなど中南米の中煎りがおすすめです。慣れてきたら、浅煎りのエチオピアやゲイシャ種など個性の強い豆に広げると違いを愉しめます。

サードウェーブコーヒーとはどういう意味ですか?

コーヒーの歴史を3つの「波」で捉えたときの第3の波を指し、1990年代後半から現在まで続く「産地の個性を主役にする」価値観のことです。ファーストウェーブ=安く広める、セカンドウェーブ=おいしく高級化、に続く流れで、「どこの・誰の豆か」という物語性まで含めてコーヒーを愉しむスタイルを意味します。

まとめ

結論として、サードウェーブコーヒーは「安く広める→おいしく高級化→産地の個性を主役にする」というコーヒー観の第3段階です。ポイントは次の3つです。

  • 3つの波は「普及・品質・個性」という価値観の移り変わりで整理できる
  • スペシャルティはSCAのカッピングで80点以上という明確な基準を持つ
  • 家庭では焙煎度→産地→精製→焙煎日の順で選ぶと失敗しにくい

一杯のスペシャルティコーヒーは、19世紀からの技術革新と文化的探求の結晶です。EL ORIGENでは今後も、南米産地の個性と透明性を軸に、コーヒーの文化と選び方の情報を発信していきます。

最終更新: 2026-07-03

※本記事は一般的な情報提供を目的とし、公開データと編集部の整理に基づく個人の感想を含みます。最新情報は各機関の公式サイトをご確認ください。

運営:EL ORIGEN(南米スペシャルティコーヒー専門店)|オンラインショップ



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