コーヒーの新しい波 〜サードウェーブで広がるスペシャルティコーヒーの魅力〜 | EL ORIGEN

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コーヒーの新しい波 〜サードウェーブで広がるスペシャルティコーヒーの魅力〜

「EL ORIGEN コーヒー講座 第3講座」にようこそ、おいでくださいました。コーヒーの奥深さを知れば知るほど沼にハマっていく底無しの世界です。第1、第2と二つの講座を読んでくださった方が第3講座に来られたことと思います。既にあなたはコーヒーの沼にハマっていることでしょう。今回は多くの方に伺った上でこの内容にしようと決めました。

「コーヒーは苦いもの」そんなイメージをお持ちではありませんか?実は現代のコーヒーは、フルーティで華やかな香り、心地よい甘みを持つ驚くほど多彩な味わいが楽しめる飲み物へと進化しています。この革命的な変化は「サードウェーブ」と呼ばれるコーヒー文化の新しい潮流によってもたらされました。サードというからには、ファーストとセカンドがあった筈と思ってくださった方。大正解です。

今回は、コーヒー文化の歴史的な流れを簡単に振り返りながら、「サードウェーブ」とそれがもたらした「スペシャルティコーヒー」の魅力について、コーヒー初心者の方にもわかりやすくご紹介します。それでは早速みてみましょう。

コーヒーカルチャーの3つの波

コーヒーの現代史は、大きく3つの「波(ウェーブ)」で表現されることがあります。

ファーストウェーブ(第一の波):大衆化の時代

1900年代初頭から1960年代にかけて広がった第一の波は、コーヒーの「大衆化」の時代でした。この時期、ネスカフェのようなインスタントコーヒーや真空パックに入った挽き豆が登場し、一般家庭でも手軽にコーヒーが楽しめるようになりました。

特徴:

  • 大量生産・大量消費
  • 低価格で手軽な入手性
  • 均一で変わらない味を重視
  • 「コーヒーは苦くて濃いもの」というイメージの定着

この時代、コーヒーは主に「カフェイン摂取のための飲み物」という位置づけで、品質よりも量と便利さが重視されていました。

セカンドウェーブ(第二の波):専門化の時代

1970年代から1990年代にかけて起きた第二の波では、コーヒーの「専門化」が進みました。スターバックスを筆頭とするスペシャルティコーヒーショップの台頭により、エスプレッソベースの飲み物(ラテ、カプチーノなど)が普及し、「コーヒーショップ体験」そのものが価値を持つようになりました。

特徴:

  • 焙煎度合いへの注目(多くの場合、深煎り)
  • エスプレッソ文化の普及
  • コーヒーの原産国への関心の高まり
  • カフェ空間としての価値

セカンドウェーブにより、コーヒーは単なる飲み物から「ライフスタイル」の一部へと昇華しました。しかし、多くの場合、豆自体の品質や風味の複雑さよりも、深煎りによる力強い味わいや、ミルクやシロップとの組み合わせが重視されていました。

サードウェーブ(第三の波):芸術化の時代

1990年代後半から現在に至るサードウェーブは、コーヒーを「芸術」として捉える動きです。コーヒー豆そのものの品質と個性に焦点を当て、産地や品種、栽培方法、精製法などが生み出す多様な風味を楽しむ文化が広がっています。

特徴:

  • 豆の産地・農園・品種への注目
  • 直接取引による生産者との関係構築
  • 浅煎り〜中煎り焙煎による豆本来の味わいの追求
  • 手法にこだわった抽出技術
  • トレーサビリティ(追跡可能性)の重視

サードウェーブではコーヒーはもはやワインのように、その「テロワール」(土地の特性)が味わいに与える影響や、生産者のストーリーまでも価値として評価されるようになりました。

サードウェーブの中心:スペシャルティコーヒー

サードウェーブの中核をなすのが「スペシャルティコーヒー」です。これは単なるマーケティング用語ではなく、厳格な品質基準を満たしたコーヒーだけに与えられる称号です。

サードウェーブが変えた「常識」

1. 「苦味 = 品質」の誤解を解く

多くの日本人が持つ「コーヒーは苦いほど良い」という概念は、実はセカンドウェーブ時代の深煎り文化の名残です。サードウェーブでは、苦味よりも「甘み」「酸味」「香り」のバランスこそが品質の指標とされています。

実際、最高級のコーヒーは砂糖を加えなくても自然な甘みを感じることができます。これは豆が本来持つ糖分や果実味によるもので、過度な焙煎による苦味で隠されていた本来の味わいが表現されているのです。

2. 「同じ国なら同じ味」の間違い

従来は「ブラジル産」「コロンビア産」といった大まかな国別の分類で語られることが多かったコーヒーですが、サードウェーブでは同一国内でも農園や標高、精製方法によって全く異なる風味プロファイルを持つことが理解されるようになりました。

例えば、コロンビア一国でも、カリブ海沿岸の低地と高地アンデス山脈では気候も土壌も大きく異なり、それぞれ独特の風味特性を持ちます。南米では特にこの「マイクロクライメット」(微小気候)による違いが顕著で、わずか数キロ離れた農園でも全く異なる味わいのコーヒーが生産されています。

3. ワインとの共通点:テイスティングノート

サードウェーブでは、コーヒーの風味をワインのように「テイスティングノート」で表現するようになりました。「チョコレート」「フローラル」「ベリー」などの表現は、その豆が持つ複雑な風味成分を言語化したものです。

これは単なる比喩ではありません。コーヒー豆には実際に900種類以上の芳香成分が含まれており、その組み合わせが多様な風味を生み出しています。南米の高地で育つコーヒーには特に花のような香り成分(フローラルエステル)が多く含まれることが科学的にも証明されています。
下記添付画像が現在テイスティングをする際のスペハルティコーヒーが分類されるフレーバーの種類です。

サードウェーブがもたらした新しい価値観

1. 季節性(シーズナリティ)の重視

サードウェーブでは、コーヒーにも「旬」があることが認識されるようになりました。果物と同じように、収穫時期やその年の気候によって味わいが変化し、それこそがコーヒーの魅力とされています。

南米では一般的に4月から9月が収穫期ですが、同じ農園でも収穫初期と終期では異なる風味特性を示します。また、エルニーニョ現象などの気候変動によって、同じ農園でも年によって大きく風味が変わることがあり、それを楽しむのもサードウェーブコーヒーの醍醐味です。

2. 実験的な精製方法への挑戦

サードウェーブの影響で、生産者たちは従来にない革新的な精製方法に挑戦するようになりました。これにより、これまでにない全く新しい風味プロファイルのコーヒーが生まれています:

  • クライオ・マセレーション:低温環境での長時間発酵により、より複雑な風味を引き出す
  • カーボニック・マセレーション:ワイン製造技術を応用し、嫌気性発酵による独特の風味を創出
  • 乳酸菌発酵:ヨーグルト製造に使われる菌を使い、クリーミーな口当たりを実現

これらの革新的手法により生まれるコーヒーは、従来の「コーヒーらしさ」を超越した新しい味覚体験を提供しています。ただ、複雑な精製方法も今では種類が多すぎてしまい、名前が違うだけで精製の内容は極めて近しいものも存在します。プロの視点からすると、その一つ一つの拘りがスペシャルさを際立たせるのですが、初心者の方に限っては、手当たり次第色々な精製方法を飲んでみる前に、ウォッシュト、ナチュラルといった従来の精製方法を用いた豆から挑戦してみるのが良いでしょう。

スペシャルティコーヒーの楽しみ方

スペシャルティコーヒーを初めて試す方へ、基本的な楽しみ方をご紹介します。

1. 浅煎りから始めてみる

深煎りに慣れている方は、いきなり最も浅い焙煎度合いのコーヒーを選ぶと、酸味が強く感じられるかもしれません。まずはミディアムロースト(中煎り)から始めて、徐々に浅煎りにチャレンジしていくのがおすすめです。

2. 豆は挽きたてを

コーヒー豆は挽いた後、15〜30分で風味が急速に失われていきます。可能であれば豆の状態で購入し、飲む直前に挽くのがベストです。手動ミルは比較的安価で手に入るようになりました。

3. 抽出方法を工夫する

ドリップ、フレンチプレス、エアロプレスなど、さまざまな抽出方法があります。特にハンドドリップは道具さえあれば家庭でも手軽に試せ、スペシャルティコーヒーの繊細な風味を引き出すのに適しています。

4. 温度が下がるにつれて変化する風味を楽しむ

高品質なスペシャルティコーヒーは、飲み始めの熱いうちから徐々に冷めていくにつれて、様々な風味が顔を出します。最初から最後まで、その変化を楽しんでみてください

5. ブラックで試してみる

スペシャルティコーヒーは、ミルクやシュガーを加えなくても、自然な甘みとバランスの良い味わいが楽しめます。まずはブラックで飲んでみて、その後お好みで少量のミルクや砂糖を加えても良いでしょう。

まとめ:新しいコーヒー体験の扉を開く

サードウェーブがもたらしたスペシャルティコーヒーの世界は、「コーヒーは苦いもの」という先入観を持つ方に、驚きと喜びに満ちた新たな体験を提供してくれます。それは単に「美味しい」という感覚を超えて、遠く離れた生産地や生産者との繋がりを感じる豊かな経験です。

Misionero株式会社では、南米の小規模農家が丹精込めて生産したSCAスコア85点以上の厳選されたスペシャルティコーヒー、特にマイクロロット・ナノロットと呼ばれる希少な豆を取り扱っています。一杯のコーヒーを通じて、南米の大地と生産者の情熱を感じていただければ幸いです。

「コーヒーは苦い」という固定観念から解放され、多彩で豊かなコーヒーの世界へ一歩踏み出してみませんか?あなたのコーヒー体験が、サードウェーブによって新たな高みへと導かれることを願っています。

この記事の著者

竹内 暁信

南米でインディオたちと生き、受け取った無償の愛。
その恩に報いるため、私は南米専門商社Misioneroを立ち上げました。
趣味で5年ほど嗜んでいたコーヒーに目をつけ、直接取引を開始。
希少なマイクロロット・ナノロットのスペシャルティコーヒーと生産者たちの情熱を一粒に込め、南米の大地の鼓動とともに、日本へ届けています。

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